新たな顧客体験価値の具現化に向けて「DXプロジェクト」を推進する株式会社ノジマ。同社は2024年3月、ノジマ公式アプリ(以下、ノジマモバイルアプリ)上でお客さまの店舗内での居場所がリアルタイムにわかる「店内マップ」と店内のスタッフを呼び出す「コンサルタント相談」の機能を追加しました。両機能にはソニーの屋内行動分析プラットフォーム「NaviCXTM(ナビックス)」が活用されています。これにより、お客さま対応の状況が可視化され、店舗スタッフの熟練度に応じた接客ができるようになりました。 PDFダウンロード
【1.課題・背景】「DXプロジェクト」として「店内マップ」と「コンサルタント相談」をリリース
「デジタル一番星」を志に掲げ、関東・甲信越を中心に234店舗(2024年11月時点)のデジタル家電専門店を展開するノジマ。最大の特徴が、メーカーおよびキャリアからの派遣スタッフによる接客ではなく、自社のスタッフが「相談員」としてフラットな立場でお客さまの好みに合わせて商品を提案する「コンサルティングセールス」です。
同社は、独自のコンサルティングセールスで培ってきた現場の知見と、デジタルエンジニアリングの技術を掛け合わせることで新たな顧客体験価値を具現化するべく、2022年6月より「DXプロジェクト」を展開しています。2023年12月には第1弾のサービスとして、ノジマモバイル会員向けの「ノジマモバイルアプリ」上で利用できるQRコードを利用した注文機能と、店員呼び出しボタンを付けた店内マップの提供を全店舗で開始しました。
その後も「感動接客」の進化に向けてノジマアプリの強化を進め、第2弾として2024年3月にリリースしたサービスが、お客さまの位置や向きをリアルタイムに表示する「店内マップ」と、店内のスタッフに相談できる「コンサルタント相談」の機能です。
開発の背景には、お客さまからの声がありました。店頭に配置している物理的なフロアマップは、設置場所が限られているために、「どこに何の商品が置いてあるのかわかりづらい」「商品を探すのが大変」「自分の位置がわからない」といった相談が寄せられていました。商品に関して相談したい場合でも、「スタッフが忙しそうで声をかけにくい」「近くにスタッフがいない」といったこともありました。
これらの困りごとを解消するべく、スマートフォンの各種センサーとソニー独自のAIを活用した測位技術で、来店客のナビゲーションに活用したり、来店客の行動を可視化する「NaviCX」を採用し、「店内マップ」と「コンサルタント相談」の機能を開発しました。
【2.サービス概要】「店内マップ」上にお客さま自身の位置や向きをリアルタイムで表示
「店内マップ」の機能は、ノジマモバイルアプリ上にお客さまが来店した店舗の店内マップを表示するものです。マップ上にお客さま自身の位置や向きをリアルタイムで表示することで、現在地と各商品エリアとの位置関係が一目でわかるようにしています。その結果、目的の商品エリアまでたどり着きやすくなっています。「コンサルタント相談」の機能では、ノジマアプリ上の「店員呼出」ボタンを押すだけで店内のスタッフを呼び出し、商品に関する相談をすることができます。
これらの機能には、ソニーが提供する屋内行動分析プラットフォーム「NaviCX」が活用されています。NaviCXはソニー独自の測位技術を使用し、店舗や施設内のお客さまやスタッフの行動データをリアルタイムに取得・分析するものです。スマートフォンの各種センサーとAIを活用したPDR(歩行者自律航法)をベースに、店舗内に設置した発信機(ビーコン)、測位対象場所に存在する「地磁気」を組み合わせ、より高精度で測位を実行します。
ソニーが提供する測位用ソフトウェア開発キット(SDK)をモバイルアプリに組み込むだけで、「位置」「滞在時間」「動線/経路」に加えて、これまでの位置情報取得ソリューションでは難しいとされていたお客さまの「向き」の情報までをリアルタイムに取得することができます。導入までの準備期間を短縮し、初期導入コストを抑制できるのも特長です。店舗内に設置するものは最小限台数のビーコンだけで、大規模なインフラ投資は不要。自社社員だけでも店舗導入準備ができるため、運用コストを抑えつつ、大規模な施設や多店舗への展開も容易です。
ノジマにおいても、すでに提供しているモバイルアプリに組み込みやすいことや、測位精度や「向き」情報が取得できること、導入までの準備が簡単なこと、初期投資が抑制できることなどが決め手となり、NaviCXの採用に至りました。
【3.期待する効果】お客さまの不便を解消するだけでなく、スタッフの視点でも新たな気付きを獲得
NaviCXを用いた「店内マップ」および「コンサルタント相談」の機能は順次店舗へ導入中で、現在も利用店舗の拡大を進めています(2024年12月末時点で、約110店舗導入済み)。
ノジマでは店舗で働くスタッフなど約3,000名が3,000台以上のタブレット端末(BYOD)を用い、作業の効率化やスタッフ間の迅速な情報共有に活用しています。タブレットは基幹システムとも連携し、商品の在庫などの各種情報を素早く確認したり、コンサルティングに活用したりすることができます。
今回、NaviCXを用いて取得したお客さまの測位情報は、スタッフ向けのタブレット上でも可視化できるようにしています。スタッフのタブレットでは、アプリを立ち上げているお客さまの位置と状況、店舗内にいるスタッフの接客状況が把握できます。ノジマモバイルアプリの「コンサルタント相談」機能でお客さまからスタッフの呼び出しがあった際には、一番近い場所にいるスタッフが自発的に判断して対応することや、店長やマネージャーがスタッフを指名することが可能です。その結果、呼び出し内容に応じて熟練度の高いスタッフを対応させるなど、配置の最適化ができるようになりました。
このようにモバイルアプリにNaviCXの測位機能を搭載することで、お客さまの不便を解消するだけでなく、スタッフの視点で新たな気付きを得ることができました。
【4.今後の展望】NaviCXで蓄積した行動データを店舗オペレーションの改善やマーケティング施策に活用
DXプロジェクトにおけるモバイルアプリ新機能の開発には、店舗スタッフへのヒアリングやワークショップなどを通じた意見が反映されています。こうした環境を活かして今後も開発を継続し、NaviCXで蓄積した行動データを店舗オペレーションの改善やマーケティング施策へ活用していく考えです。
接客に時間がかかる家電製品の種類、エリア、人など、店内で起きている事象全体を見える化し、収集した定量的なデータに基づき店舗オペレーションの改善を進めることも見据えています。また、店舗内のお客さまの流れを分析したマーケティング施策の立案で顧客体験価値のさらなる向上を目指します。
ノジマは今後もDXプロジェクトを推進し、ネットにはないリアル店舗ならでは強みを追究していきます。また、お客さまにより快適で満足度の高いお買い物体験を提供するべく、「感動接客」をさらに進化させていきます。
事例のポイント
<課題> ・「DXプロジェクト」による新たな顧客体験価値の具現化 ・「商品を探すのが大変」などのお客さまの困りごとの解消
<解決策> ・「店内マップ」によるお客さまの位置や向きのリアルタイム表示 ・「コンサルタント相談」によるスタッフの呼び出し
<導入効果> ・お客さまの位置情報を把握したコンサルティングの実現 ・スタッフの熟練度に応じた配置の最適化 |
株式会社ノジマ
業種: 小売業
従業員数: 連結 16,422名(2024年3月末時点)
URL: https://www.nojima.co.jp/
事業内容: 首都圏を中心とするデジタル家電専門店運営事業、全国での携帯電話キャリアショップ運営事業、インターネット事業、海外での店舗運営事業などを展開。メーカーおよびキャリアからの派遣スタッフによる接客ではなく、自社のスタッフが「相談員」としてフラットな立場でお客さまの好みに合わせて商品を提案する「コンサルティングセールス」を通じて、高い顧客満足度を実現している。
※ 内容は、記事作成時(2024年12月時点)のものです。