― はじめに「ポケットサイン防災」「ポケットサイン受付」とはどのようなサービスなのか、改めて教えてください。
ポケットサイン防災は、マイナンバーカードを用いたデジタル身分証アプリ「ポケットサイン」内のミニアプリです。
避難指示の通知・避難所のチェックイン・避難所状況の可視化の3つの機能を搭載しており、同アプリを導入していただくことで、住民に適切な避難指示を出したり、避難所の管理をシンプルにしたり、避難所のリアルタイムの状況を確認したりすることができます。災害時の避難支援や避難業務を効率化するアプリとして、現在4つの自治体に導入いただいています。
ポケットサイン受付もポケットサイン防災と同様に「ポケットサイン」内のミニアプリのひとつです。スマートフォンのQRコードを読み取るか、またはマイナンバーカードを専用の受付端末にタッチするだけで、受付が完了するのが特徴です。イベントや施設などでの受付を迅速かつ正確に進めることができる他、来場者のデータを瞬時に可視化することができます。
※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
― PaSoRi×Web Clientは「ポケットサイン防災」「ポケットサイン受付」でどのように利用されているのでしょうか?
これらのアプリでは、手入力・スマホアプリ・マイナンバーカードの3つの受付方式を提供しています。PaSoRiとWeb Clientは、この中のマイナンバーカード受付システムに採用しています。具体的には、PaSoRiはマイナンバーカードをタッチする受付端末に、Web Clientは受付の情報を管理するWebのコンソール画面に使用しています。
例えばポケットサイン防災では、避難所のパソコンにPaSoRiをつないでおき、避難者の方がマイナンバーカードをPaSoRiにタッチして4 桁の暗証番号を入れると、自動的に避難所受付が完了します(※ポケットサイン受付は暗証番号不要)。このようなマイナンバーカードを使った受付システムをPaSoRiとWeb Clientで構築しています。
― PaSoRi×Web Clientを導入する前に抱えていた課題を教えてください。
当初、ポケットサイン防災のマイナンバーカード受付システムは、パソコンにインストールして使用するアプリとして開発していました。しかし、有事の際にパソコンに管理ソフトをインストールしたり、アップデートしたりするのは現実的ではありません。そこで、インストールが不要でアップデートもしやすいWebアプリとして開発を進めることにしたのです。
ただ、ここで課題になったのが「ブラウザーからマイナンバーカードにどうやってアクセスするか?」という点です。当時はそれを実現する手段がなかったため、どのような実現方法があるのかを一から探す必要がありました。
― その課題がきっかけでWeb Clientを知っていただいたのだと思うのですが、最終的にPaSoRi×Web Clientを選んだ理由は何だったのでしょう?
PaSoRiは、マイナンバーカードの受付端末としてすでに導入していました。問題はWebアプリでの利用だったのですが、ネットでソニーさんがWebアプリ向けSDKを提供しているということを知り、 検証してみることにしたのです。PaSoRiは、Web拡張ソフトウェアをインストールせずにブラウザーで使える唯一のICカードリーダー/ライターですし、Web Clientはその環境に対応したSDKですので、すぐに使ってみようということになりました。
― Web Clientの開発のしやすさや使い勝手はどうでしたか?良かったと感じる点があれば教えてください。
NFCの開発は過去にも行ったことがあるのですが、Web Clientは使いやすいと感じました。特によかったのは、ドキュメントとサンプルが充実している点で、トラブルが発生することもなくスムーズに開発を進めることができたと思います。
― その他、Web Clientで開発をしていてメリットに感じた部分はありますか?
検証の段階で一度だけ問い合わせをさせていただく機会があったのですが、対応がスピーディーで、すぐに問題を解決することができました。サポートの素早さや丁寧さも素晴らしかったと思います。
― では導入効果についても教えてください。導入してよかったと感じるのはどのような点でしょうか?
特別な端末を用意することなく、パソコンとPaSoRiだけでマイナンバーカードを読み取れるシステムが構築できた点ですね。準備や操作が非常にシンプルで、混乱が予想される災害時でも十分に機能するサービスを作ることができたと感じています。
― ありがとうございます。課題解決以外で導入してよかったと感じる部分はありますか?もしあれば教えてください。
行政の導入ハードルを大幅に低減できたという点です。例えば、パソコンへのインストールが必要なアプリの場合、行政ではいくつもの承認プロセスを通過する必要があり、導入までに非常に時間がかかります。その点、ポケットサイン防災はWebアプリのため、インストールなしで使用することができ、時間がかかる承認プロセスも最小限に抑えることができます。これによって、使いやすさだけでなく導入してもらいやすいサービスにできたと思います。
― 今回ご紹介いただいたポケットサイン防災やポケットサイン受付以外で、PaSoRi×Web Clientを使用しているケースがあれば教えてください。
PaSoRiとWeb Clientによる「パソコンとPaSoRiでマイナンバーカードが読み取れるシステム」は、とても汎用性が高いと感じており、実際に他のサービスでも利用しています。
ひとつは、公的個人認証サービス「PocketSign Verify」です。これは、マイナンバーカードが搭載する「公的個人認証サービス(JPKI)」による本人確認が可能なSDKとAPIを提供するもので、マイナンバーカードの本人確認を利用したい事業者向けのサービスです。
もうひとつは、現在、自治体と実証実験を行っている自動運転バスの乗車記録システムです。バスに設置されたPaSoRiにマイナンバーカードをタッチするだけで簡単に乗車受付ができ、かつデータを記録することができます(※暗証番号不要)。
― ありがとうございます。最後に、PaSoRi×Web Clientに期待することや今後の展望があれば教えてください。
現在、ポケットサイン防災や自動運転バスの乗車記録システムとまったく同じ仕組みを、「電気自動車の充電スポットに設置できないか?」といった相談もいただいています。こちらは、充電スポットの利用履歴を取得するという用途ですが、PaSoRi×Web Clientの汎用性に大きな可能性を感じています。今後も、お客様からの相談に合わせて、この仕組みをどんどん有効活用していく予定です。
ポケットサイン株式会社
ポケットサイン株式会社は、公的個人認証とマイナンバーカードを活用し、便利で安全なデジタル身分証やオンライン本人確認サービスを提供する企業。デジタル身分証アプリ「ポケットサイン」、公的個人認証サービスを用いた本人確認機能を事業者のサービスに簡単に組み込める「PocketSign Verify」の他、避難支援・業務効率化アプリ「ポケットサイン防災」、受付業務効率化アプリ「ポケットサイン受付」など、さまざまなオンラインサービスを提供している。
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