ー VRコーチング導入前の課題を教えてください
建設業界全体に言えることですが、現場の人材不足という課題があるため新規入職者の人材育成を早期に進める必要がありました。
特に近年は工業高校からの採用が厳しくなり、普通科出身者など建設業界を全く知らない入職者も増えています。
そのため、座学研修だけでは受講者の習熟度が上がらず、現場に出た時のパフォーマンスに課題があったため、より実践的に繰り返し学べるコンテンツを探していました。
ー 最終的にVRコーチングを選んだ決め手は何ですか
現場さながらの臨場感を再現し研修効果を最大化するために、クオリティの高いCGを活用したVRコンテンツを提供していることが大きな決め手です。360度カメラで撮った現場写真や動画は現場の臨場感や没入感がありますが、どうしても「見て終わる」体験にとどまり、学んだ内容を現場作業に活かすことが難しいのが現状です。
一方、CGによるVRコンテンツは、実際に手足を動かしながら作業を体験できるため身体を使った“体得”が可能です。まるでゲームをプレイしているような感覚で、楽しみながら安全確認や施工手順を身につけることができます。こうした学びは、現場での作業精度や安全性の向上に直結します。
さらに、建設業界全体での活用を目指すうえでも、リアルな臨場感と高い没入感を両立したクオリティが不可欠でした。そこで、ゲームソフト制作で豊富な実績を持つソニーさんが手掛けるコンテンツに期待し、ビジネスパートナーとして選出させていただきました。
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鉄骨サビや影、背景などをリアルに再現し、没入感を演出
ー VRコーチング導入後の変化を教えてください
研修受講者の習熟度が上がったことが大きな変化だと考えています。
例えば、高所作業のような危険箇所での技能研修や災害体験による安全講習を複数回実施することは難しいのですが、VR上で一度コンテンツを構築すれば何度でも利用できるため、繰り返し学習することで習熟度が高まったと考えております。また採点機能を取り入れ、作業のポイントをよりわかりやすく習得できるようになりました。
また、コンクリートの打設作業などの研修では、実際の資材を準備していましたが、VRで再現できるため資材コストを低減できるようになりました。
技能研修(コンクリート打設作業) |
研修結果を点数で表示 |
ー VRコーチング導入による研修講師側の変化を教えてください
以前は研修講師によって教え方にばらつきがありましたが、VRの中であらかじめ危険個所や説明ポイントを組み込んでいるため、研修の品質を保つことができるようになりました。
また、バーチャル空間を共有しながら複数人でプレイできるため、研修講師の予定による時間や場所の制約がなく、実施できることも期待できます。
ー VRコーチングで研修を受けた入職者や就活生における変化はありましたか
受講後のアンケートにて、「ゲーム形式で研修が楽しくでき、現場でのモチベーション向上につながった」と回答いただきました。また、「ぜひ同僚や後輩にも受けてほしい」といったコメントもあり、受講者の満足度の高さがうかがえます。
さらに、就活生からも「VRで現場体験することにより、建設業界に興味を持つきっかけになった」といった反応が寄せられており、教育・採用の両面で効果が見られています。
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安全講習(高所作業)を大人数で実施 |
高所作業による危険体験を実施 |
ー 今後はVRコーチングをどのように活用していきたいですか
コンクリート打設のような事前準備が必要な場面や高所作業のような危険シーンは多岐にわたるため、コンテンツを拡充して幅広く学べるように活用できればと考えております。
今後はこの取り組みを一部の企業や現場にとどめるのではなく、建設業界全体で共有し、業界全体の安全レベルや技術力の底上げにつなげていきたいと考えています。
VRは単なる一時的な技術ではなく、“これからの建設教育の標準”となるポテンシャルを持っているため、より多くの企業にこの技術を広げていけるよう、継続的に取り組んでいきます。
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現場の安全巡視 |
鉄骨の玉掛け作業 |
ー 研修講師だけでなく、受講者やこれから建設業界を目指す皆さまにも効果が生まれたこと、嬉しく思います!引き続きVRコーチングがご支援できるように改善を進めてまいります。貴重なお話をありがとうございました!